中古スタッドレスタイヤの行方

中古スタッドレスタイヤの行方
その昔、自動車輸出会社で働いていた時の話です。
オークションで買ってきた車、特に4WD車などにスタッドレスタイヤが付いていることが多かったんですね。
これは雪が良く降る地方で乗られていた車で、しかも冬場や春先にオークションで競り落とした車によくスタッドレスタイヤが装着されていました。
私は関東の店舗に勤務していたのですが、関東ではスタッドレスタイヤなんか滅多に履きません。
たまに大雪が降ったりしてスタッドレスタイヤが良く売れたりすることもあるみたいですが、通常は装着しません。
ちなみに私の勤めていた会社は、東南アジアへの輸出がメインでしたので、輸出する車にスタッドレスタイヤは付けません。(東南アジアは雪が降りませんから)
ですから、スタッドレスタイヤが装着されたままの車輛は、普通のタイヤに履き替えていました。
となると、外したスタッドレスタイヤはどうなるのかと言いますと、もちろん新品じゃないですから売る訳にも行かず、倉庫の脇に山積みになっていたんですね、スタッドレスタイヤが。

跡形もなく消えたスタッドレスタイヤ

あるとき、倉庫に行ってみるとあんなに大量に山積みされていたスタッドレスタイヤが、跡形もなくきれいさっぱり無くなっているのです。
その当時、私はまだ入社したてだったので、スタッドレスタイヤがどこに行ったのか知る由もありませんでした。
そこで先輩に聞いてみました。
「あの山積みになってたスタッドレスタイヤ、どこ行っちゃったんですか?」と。
すると先輩は「ああ、あれね、ロシアへ持ってくんだよ」と言っていました。
ロシアは日本の中古車の最大の輸出先です。(当時はそうでした。今もロシアが一番の輸出先かどうかは定かではありません)
その中古車ディーラーでも、日本では売れそうもない廃車寸前の車(でもちゃんと走ります)や、売れ残りの低価格車をロシアの輸出ブローカーへ売っていたんですね。
ちょうどその日、港でロシア行の車両の積み込みがあると言うので、いっしょに連れてってもらいました。

仰天!中古車の船積み

車の船積ってすごいですよ!
まるで引越し屋さんのダンボールみたいに、車の上に車を乗っけていくのです。キズとか凹みとか、そんなこと全く関係なし!
いかにたくさんの車を船に乗せられるか!
ちょっとでも船が傾いたら崩れ落ちちゃうんじゃないかと思ってハラハラしてしまいました。
そんな中古車といっしょにスタッドレスタイヤも船に乗せられるのですが、その乗せ方がこれまたすごい。
中古車の車内に無理やりスタッドレスタイヤを押し込むのです。

ああ、おそロシア・・・

そしてロシアに着いてから、これまた仰天の事実が。
日本から出港した中古車を積んだ船は、ウラジオストクとかに行くらしいのですが(日本から一番近いロシアの主要港です)中古車の需要があるのは何と言っても首都のモスクワ。
そのウラジオストクからモスクワまで、何と「自走」して運ぶのだそうです。
ウラジオストクとモスクワってどれくらいの距離があると思いますか?
何と、9,000キロ!
ウラジオストクからモスクワまで
900キロじゃないですよ!9,000kmです!
9,000kmと言えば、東京からトルコのイスタンブール、はたまたベルリンくらいの距離ですよ!
ですが、新車ならいざ知らず、ほとんどが廃車寸前のポンコツや10年落ちの中古車、果たしてそんなに走れるのでしょうか?
聞いたところによると、半分くらいは途中で壊れてしまってモスクワまで辿り着けないそうです。
辿り付いたとしても、モスクワに着く頃はタイヤはつるっつるになっちゃうそうです。そりゃそうですよね、9,000kmもタイヤ交換しなけりゃ。

でも、船積みでモスクワの近くまで行くとなると、バルト海まで行かなければなりません。
そんな所まで行ったら船賃がとんでもない金額になってしまいます。
ですからモスクワまで自走するしかないんですね。
うーん、恐るべし、ロシア!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加